真っ白な雪に赤が混ざる。
銃撃音が鳴り響き、男が声を上げた。



「チクショウ！！　なんだよアレ、実弾が効かないなんて聞いてないぞ！！！」
「ヒヨっ子が。　サンタに飛び道具が効かないなんて、きょうび幼稚園児でも知ってるハズだぜ？」



すぐ側で別の声がする。男の先輩であった。



「も、もう嫌だ……あんなの勝てるハズねーよ、降伏するしか……」
「馬ッ鹿野郎！！　しっかり習ったハズだぞ……サンタ降伏した人間がどうなるのか！」

「サ、サンタにされても……死ぬよりマシです！！！！」
「ママっ子が……手前みたいのがいるからサンタがいつまでも―――避けろ新米！！」



会話の途中、男は先輩に殴り飛ばされた。
我にかえって文句を言おうとしたその時、目の前に広がっていた光景に
思わず言葉が出口を失った。



「い、痛ッ……殴るなんて―――先輩？」
「………チッ、片腕持ってかれた」
「せせせせせせ、先輩腕が！！！！！！！」

「ガタガタ騒ぐな！！！　たかが腕一本だ。
　それより……今すぐ逃げろ、『アカハナ』が来やがった」



男は『アカハナ』についての情報を思い出し息を飲んだ。
背筋が寒くなったのは、気温のせいだけではない。



「『アカハナ』って……南半球を赤く染め上げた、あの『アカハナ』ですか……？」
「あぁ、俺も拝むのは初めてだが……こいつはとんだクリスマスプレゼントだ！」
「わわ、わかりました、スグ逃げる準備を……先輩も早く！！」



男の言葉に、先輩は平然と否定の意で答えた。
その横顔はどこか楽しげで、男は一瞬口ごもる。



「馬鹿ヤロウ、伝説のサンタをこの目で拝めるんだぜ。　どうして俺まで逃げなきゃいかんのだ？」



男は、先輩を思い直させる言葉を考えたが思いつかず、ストレートに、
勝敗を予測する言葉を投げた。



「で、でも……勝てるハズ無いッスよ！！！！」
「ママっ子のお前がいちゃ〜な……邪魔だ、さっさと行け！！！」
「は、ハイィィィィィイッ！！！！！」



先輩が声を荒げると、男はびくりと体を震わせ素直に従った。
それを横目で見送って、先輩はポツリポツリと、まだ見ぬ相手に話しかける。



「ったく、ママっ子の世話は楽じゃねーな……
　
　さて、『アカハナ』よぅ。　暫く、俺と遊んでいって貰おうか？」



雪原の向こうの不穏な空気に、先輩は二ヤリとした。





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